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board4 - No.1893

Re:反銀英伝・キルヒアイス亡命す ちょっとまとめてみました

投稿者:Merkatz
2002年05月14日(火) 14時36分

・軍人への道

たしか同盟は徴兵制だったはずです。
つまり黙っていてもやがて赤紙一枚で召集されちゃう。
だとしたら、最初から軍人として出世を目指すほうがよいと考えてもおかしくはありません。
(亡命者だろうが市民権を得て同盟市民となるわけですから、当然他の同盟市民と同じ義務を果たさねばならない)
また、キルヒアイスが亡命前にどんな職に就いていたかも重要です。
おそらく両親が評したとおり、先生にでもなっていたんじゃないでしょうか。
帝国での教職としてのスキルが、同盟でそのまま通用するわけがありません。
(免許だって意味なくなるし)
とすると勉強しなおす必要があります。
ところがキルヒアイスはすぐにでもミューゼル姉弟を養わなくてはならないので、職を得るためにスキルを磨く余裕はない。
亡命前のキルヒアイスが技術職でないかぎり、やっぱり軍隊が手っ取り早いということになる可能性が高い気がします。
(市民権を得ても亡命者は差別されているようなので、余計のこと特段の技術がない限り食っていくのは難しいと思う)

さてそこでローゼンリッターですが、実はシェーンコップは最初からローゼンリッターだったわけではありません。
幹部候補生養成所を経て、少尉のときに初めてローゼンリッターに配属されています。
(外伝3巻より)
ということは、キルヒアイスもローゼンリッター以外から始まる可能性があります。
もちろん陸戦部隊を振り出しに、出世して転科の可能性もあります。
ちなみにシェーンコップは軍専科学校の陸戦部門を卒業して伍長として任官しています。21歳(准尉)のとき士官の推薦を得て幹部候補生養成所に入っています。
専科学校に入学年齢制限があるのかどうか分かりませんが、キルヒアイスがここに入学できれば下士官からスタートできます。
ただ、士官学校みたいに在学中でも給与が出るかどうか分かりませんので、入らないかもしれません。

それからローゼンリッターについて。
「亡命者およびその子孫で構成され」「創立された理由は帝国からの亡命者をいかに厚遇しているか、亡命者たちがいかに帝国を憎んでいるかを内外に宣伝するという理由が大きかった」とあります。
つまり、単なる監視ではないわけです。
だいいち、「その子孫」も配属されているわけですから、3世4世と世代を経てもなお裏切りを心配しているようでは、民主国家として面目丸つぶれでしょう。
それと、連隊ですから、補給部隊は居ないはずです。
独立して行動できる単位は旅団(連隊の一個上)からです。

いずれにしても30歳で将官というのは苦しいですね。
まあなんとか大尉か少佐くらいまで昇進して、ヤンに見出されてヤン艦隊の幕僚の加わる方が可能性ありそうです。

・ラインハルトのいない帝国

ラインハルトが戦局を左右した戦いをピックアップして考えてみましょう。
1.ヴァンフリート4=2における地上戦
もともとリューネブルクの指揮が卓越しているので、帰趨に影響なし。
2.第6次イゼルローン要塞攻防戦
ホーランドの作戦を邪魔する者も、後方を遮断すると見せかけてトゥールハンマーの射程におびき出す者もいなくなるので同盟の優勢勝ちもしくはお決まりのドロー。
3.第3次ティアマト会戦
ホーランドを倒した主砲三連斉射が無し。ホーランド程度の攻勢に四苦八苦していた上にビュコック・ウランフのコンビを倒せるはずがない。同盟の優勢勝ち。
4.レグニツァ惑星遭遇戦
同盟軍第2艦隊を妨害するのは他の帝国艦隊になる。ヤンが参謀といっても司令官はパエッタなので引き分けか。
5.第4次ティアマト会戦
ラインハルト艦隊抜きでは勝利はあり得ない。お決まりのドローか同盟の優勢勝ち。
6.アスターテ会戦
この戦いの出兵理由が伯爵号を受けたラインハルトを試すものだった。よって出兵そのものが無くなる。そのうえ同盟は第2・4・6艦隊健在、ラップも戦死せず。

とりあえずアスターテまで見てみましたが、同盟の国力減退がかなり防がれることが分かりますね。

さてそれよりも問題なのはラインハルトがいないミッターマイヤー・ロイエンタールがどうなるか。
ロイエンタールがラインハルトに駆け込んだのは、門閥貴族と張り合える権力を所有し、かつ将来起こりうる宮廷闘争を見越して有力な権門に自分たちを売っておきたいという計算があったからです。
(外伝1巻、P86~88)
メルカッツの権力では門閥貴族と張り合えないからダメ。
ベーネミュンデ公爵夫人ですが、権力は申し分なくても、一面識も無い若い少将に後宮の寵姫がいきなり会うでしょうか?
しかもベーネミュンデ公爵夫人は軍部の支持など必要としてません。
彼女に必要なのは皇帝の寵姫としての地位を維持する力であって、武力ではありません。
この場合、リッテンハイム侯爵を頼るという選択の方が、意外ですが確実で可能性が高いと思います。

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board4 - No.1894

Re:反銀英伝・キルヒアイス亡命す ちょっとまとめてみました

投稿者:イッチー
2002年05月14日(火) 18時48分

> さてそれよりも問題なのはラインハルトがいないミッターマイヤー・ロイエンタールがどうなるか。
> ロイエンタールがラインハルトに駆け込んだのは、門閥貴族と張り合える権力を所有し、かつ将来起こりうる宮廷闘争を見越して有力な権門に自分たちを売っておきたいという計算があったからです。
> (外伝1巻、P86~88)
> メルカッツの権力では門閥貴族と張り合えないからダメ。
> ベーネミュンデ公爵夫人ですが、権力は申し分なくても、一面識も無い若い少将に後宮の寵姫がいきなり会うでしょうか?
> しかもベーネミュンデ公爵夫人は軍部の支持など必要としてません。
> 彼女に必要なのは皇帝の寵姫としての地位を維持する力であって、武力ではありません。
> この場合、リッテンハイム侯爵を頼るという選択の方が、意外ですが確実で可能性が高いと思います。

なるほど!確かにラインハルトなき帝国では双璧にとって、これが最善の策でしょうね。

そこで、私もラインハルトなき帝国の銀英伝を考えてみました。

宇宙暦796年(帝国暦487年)、銀河帝国皇帝フリードリヒ4世が死去した。ブラウンシュヴァイク公は自分の娘、エリザベートを皇帝とし、自ら摂政を名乗ったが、リッテンハイム候以下一部の門閥貴族はこの決定に承服せず、ガルミッシュ要塞にたてこもって抵抗を続けた。ブラウンシュヴァイクはメルカッツ提督を賊軍征討司令官に任命したが、彼の部下に配置されたのはフレーゲル男爵をはじめ、軍事的に無能な貴族ばかりであった。一方、リッテンハイム候はシュターデン提督を総司令官に任命したが、配下にロイエンタール・ミッターマイヤーといった有能な将官が配置され、総司令官の無能を補った。ブラウンシュヴァイク軍とリッテンハイム軍の闘いはなかなか決着がつかず、帝国の内戦はこう着状態となった。
 一方、同盟は帝国の内戦を傍観しようという意見が大勢を占めたが、一人、ヤン・ウェンリー少将のみは「今こそ、帝国領侵攻の好機である」と訴えた。この意見はトリューニヒト国防委員長の目にとまり、トリューニヒトはヤンの意見を聞いた。それはイゼルローンとフェザーンを同時に占領し、内戦を続ける二勢力の背後をつくというものでった。最高評議会はヤンが半個艦隊でイゼルローン要塞を落とすのを条件にこの作戦を認めた。ヤンはシェーンコップやキルヒアイス率いる薔薇の騎士連隊と首席副官にフレデリカ・グリーンヒル大尉、次席副官にラインハルト・フォン・ミューゼル中尉を引き連れて、イゼルローンを攻略し、占拠に成功する。その直後、ビュコックをフェザーン方面軍司令官とする同盟軍はフェザーンに進駐し、占領した。
 ヤン艦隊の後には続々と同盟軍の名のある艦隊が続き、同盟軍は一路、首都星オーディンを目指した。そこで、ブラウンシュヴァイクはメルカッツを呼びもどし、同盟軍撃破を命じる。メルカッツはよく同盟軍と戦うが、ヤンの前に敗北し、降伏する。
一方、リッテンハイム候はシュターデンをフェザーン奪回にむかわせるが、同盟軍に撃破される。しかし、ロイエンタールが指揮をとったリッテンハイム軍はメルカッツに代わってフレーゲル男爵率いるブラウンシュヴァイク軍を撃破し、オーディンに侵入する。ブラウンシュヴァイクは自殺(実はアンスバッハが殺害)し、リッテンハイムがオーディンに入城。娘ザビーネを皇帝とし、自らは摂政を名乗る。しかし、戦勝祝賀式典でリッテンハイムはアンスバッハに殺害される。無政府状態になるところをロイエンタールを宰相とする臨時政府が発足。ロイエンタール・ミッターマイヤーはオーディンにせまる同盟軍をいったん退けたうえで、休戦条約を結ぶ。(ヴァルハラの和約)
この条約により、帝国は同盟の存在を、同盟は帝国の存在を認めること、イゼルローン要塞・フェザーンとその周辺星域を同盟に割譲すること・帝国は国政の民主化につとめること・同盟派遣の高等弁務官が帝国の政治を監視することが定められる。
 ロイエンタールはヴァルハラの和約に定められた国政民主化条項に基づくという理由で門閥貴族の領地を没収。農民に分け与えるなどして、貴族の力を弱め、民衆の支持を集めることにつとめた。さらに、一部の過激な青年貴族をそそのかせて、ザビーネを誘拐させてゴールデンバウム王朝の廃止、ロイエンタール王朝の成立を宣言し、ミッターマイヤーを宰相に任命した。ザビーネを誘拐した一部貴族は辺境星域に銀河帝国正統政府を樹立したが、帝国・同盟合同軍の前に敗北し、消滅した。
駐帝国高等弁務官には帝国領侵攻作戦に功のあったヤン・ウェンリーが任命された。そのころ、内戦に中立を保ち、家門の存続に成功したマリーンドルフ家の令嬢ヒルダは「これからは同盟の時代よ!」とばかり、高等弁務官府に足しげく通っていた。そこで彼女はラインハルト・フォン・ミューゼル中尉と出会い、恋に落ちるのだが、それはまた別の物語である。

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board4 - No.1895

Re:反銀英伝・キルヒアイス亡命す<キルヒアイスは結婚できるのか?>

投稿者:イッチー
2002年05月14日(火) 18時53分

ふと思ったんですがさま、レスありがとうございます

> > > ちなみに、キルヒアイス夫婦はパン屋さん。
> >
> > ほのぼのしてかわいいですが、なぜですか?(笑)
> >
>
> 何巻だか忘れましたが、フィッシュ&チップス(だったっけ・・・)売ってた屋台の人っていうのはダメですか?
> お金を払う瞬間にお互い「?・・・あ、いえいえ、なんでもありません、それじゃ・・・」みたいな(笑)。

ヤン「あれ?どっかで会いませんでした?」
キルヒアイス「え?それはないでしょう。僕たちは帝国から逃げてきたばかりで夫婦でこの店をやっているんです」
ヤン「そうか。見間違えか・・・」
キルヒアイス「もしかしたら、前世で会っていたかもしれませんね」

てなところでしょうか(笑)

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board4 - No.1896

Re1886/1887:移動要塞いろいろレス

投稿者:冒険風ライダー
2002年05月15日(水) 15時24分

<私がその理由として考えている「地の利」とは、例えば戦記物でも良くあるような「間道を利用しての奇襲」のように、フェザーンも知っているような正規の航路を使用せず、同盟軍にいる人間にしか知る事の出来ないような一種のバイパスのようなものを利用して、帝国の予測を越える場所に出現するような事がヤンの側には出来てもおかしくはないだろう、と言う事です。こうとでも説明しない限り、バーミリオン前哨戦においてはこの時に限ってヤンが異常に冴えていたか、帝国軍が異常にヌケていたか、どっちかの結論しか見出せませんが、それではあまりにも不自然です。
これが逆の立場になると、ヤンはイゼルローンの帝国領航路データを入手できても、「移動しない」要塞に細かな間道や脇航路の存在を記した詳細な航法システムがあるとも思えませんので(そういうデータは艦船の側にしかないでしょう)、今度は帝国軍が「地の利」を活かす事が出来るようになると思いますが、いかがでしょうか?>


 これも考えられませんね。
 航路図を入手した帝国側は、同盟領内の主要航路や主要星系の情報だけでなく、航路から外れた僻地のような星系に関する情報まで掌握していました。たとえば銀英伝5巻でシュタインメッツ・レンネンカンプ両提督が敗北したライガール・トリプラ星系間は、ブラックホールが存在するためにどの主要航路からも遠く離れた星系であることを帝国側は掌握していましたし、マル・アデッタ星系のような「航路としても居住地としても全く役に立たない星系」に関する詳細な情報も航路図には存在しました。しかも、おそらく同盟側にとっては最高機密レベルであるはずのイゼルローン回廊同盟側出口付近周辺宙域(アスターテ星系やダゴン星系など)に関する情報までもがフェザーンの航路図の中には詳細に記されています。これではヤンが「間道」なるものを利用できる余地がどこにも存在しません。
 また、銀英伝5巻の中にも次のような記述が存在します↓

銀英伝5巻 P152上段~P153上段
<「ワーレンほどの用兵巧者までしてやられるとはな」
 提督たちの声は、うめきに近かった。
「いや、用兵巧者だからこそ、してやられたのだ。その点はシュタインメッツもレンネンカンプも同様だ」
 これは彼らの負け惜しみではなかった。ワーレンが戦意だけ豊かな男であれば、コンテナなど放っておいて逃げる敵を追いかけていただろう。そうであれば、かえってヤンの詭計におちいることなくすんでいたに相違ない。その意味では、明らかに、ワーレンの理性がワーレン自身の足をからめとったのだ。だがワーレンは、敗れはしたものの、一本の麦すら収穫できなかったわけではない。彼は全面潰走の寸前で艦隊の秩序を回復させ、その一方でヤン艦隊の戦闘後の行動を偵察していたのである。その結果、タッシリ星系方面からあらわれたヤン艦隊は、そのまま戦場を通過してロフォーテン星区方面へ姿を消し去ったことが確認された。
 ヤン・ウェンリーは一戦ごとに艦隊集結地と補給地を代え、移動しつつ戦っている。
 かつてラインハルトが天才によって直感した事実が他の提督たちの目にも明らかになると、帝国軍の驍将たちは、一瞬、声がなかった。この意味するところは、ヤンが特定の根拠地を持たず、むしろそれを積極的な戦略構想として確立しつつあるということだ。
「まいったな、同盟領それ自体が奴の基地になっているというわけか」
 ファーレンハイトがあわい水色の瞳に、にがにがしさと感嘆の思いをとけあわせてつぶやいた。これはいわば正規軍のゲリラ戦というわけであり、帝国軍は本拠地を持たぬ敵を追って戦わなければならないのである。その困難さを考えると、いままで彼らが踏破してきた一万光年余の征路も、長いものと思えなくなるほどだった。
 考えてみれば、イゼルローン要塞をさえ、あっさりと放棄してのけたヤン・ウェンリーである。ハードウェアとしての根拠地に執着しないのは予測しえたが、ここまで徹底するとは、そらおそろしいほどであった。
 ミッターマイヤーが軍靴のかかとで床を蹴りつけた。
「……一個艦隊」
 低い声に、膨大な量の感情がこめられている。賞賛と屈辱、感嘆と怒り、それは熱くたぎるスープだった。
「わずか一個艦隊で、わが軍を翻弄している! 奴が、好きなときに好きな場所に出現することができるにしてもだ」
 同盟軍の補給基地が八四ヶ所にのぼることは、帝国軍の知るところだが、そのいずれをヤンがつぎの根拠地とするか。それは予測しがたいところで、この場合、知識がかえって迷いの原因となるのである。>


 この記述を見れば明らかなように、バーミリオン会戦前哨戦時におけるヤンのゲリラ戦術は、敵が容易に特定できる根拠地を持たず、常に移動を繰り返しているからこそ、帝国側はヤンの動向が全く把握できず、結果としてバーミリオン会戦のような手法を使ってヤンを誘き出さざるをえなくなったわけです。
 あのゲリラ戦を展開するに際し、ヤンには間道を使う余地も、またその必要もなかったようにしか思えないのですが。


<これもおかしな話ですね。最後に確認された相手の位置さえ分かっていれば、守らねばならないのは数千~数万単位の軍事基地・有人惑星ではなく、「最後に敵の位置が確認された地点の周辺で、次に敵の行動範囲に捉えられるいくつかの基地・惑星」でしかありません。「有人惑星&軍事基地全てを移動要塞の攻撃範囲内に収める」などと言う、あまりにも過酷な無理難題を成立させるには、それこそ「一万光年のワープ航法技術といった類の超技術でも出現させるしか手はない」でしょうね(笑)。>
<とにかく冒険風ライダーさんは「神出鬼没」を強調していますが、動かない間はともかく一旦出現して基地なり惑星なりを襲えば存在が暴露されてしまい、その瞬間から移動要塞の所在を追う事は可能になるのです。>

 あの貧弱な索敵・観測・哨戒システムしか存在しない銀英伝世界で、一度見つけただけで移動要塞の行方を「追い続ける」事が可能であると思いますか? たった84箇所の補給基地によって支えられていたヤンのゲリラ戦でさえ、帝国側はラインハルト自身を餌にして誘き出すという方法を使わなければ、ヤンを捕捉することが不可能だったというのに。
 確かに「襲撃した瞬間」は敵側も移動要塞の所在を確認することはできます。しかし、そこから恒常的に移動要塞を捕捉し続ける為には、常に偵察部隊が移動要塞に付かず離れずしながら監視しなければならないのです。しかも銀英伝世界における索敵圏内はたかだか500~1000光秒弱の間。そこまで近づくと、当然のことながら移動要塞側にも偵察部隊の所在がつかめてしまいますので(銀英伝の中にも、敵艦隊を発見した偵察艦が逆に敵に発見されるといった描写がいくつもあります)、逆に偵察部隊側が移動要塞側によって撃滅されてしまうのがオチなわけです。
 また、移動要塞を発見したところで、今度は帝国側の艦隊が移動する際にかかる時間と手間の問題があります。帝国領はかなり広く、たとえばガイエスブルク-オーディン間の移動には通常行程20日、フェザーン-オーディン間のそれも1ヶ月近い時間がかかってしまいます。しかも銀英伝の描写を見る限りでは、移動要塞と宇宙艦隊の航行速度にはそれほどの格差が存在しないばかりか、艦隊の隊列を維持しながら行軍する手間がない分、下手をすると移動要塞の方が速い航行速度を持つ可能性すらありえます。
 さらに「最後に敵の位置が確認された地点の周辺で、次に敵の行動範囲に捉えられるいくつかの基地・惑星」に関しても、前述のようにあの貧弱な索敵・観測・哨戒システムしか持ちえない銀英伝世界の事情を利用すれば、それらを全てすり抜けてはるか後方の目標地点を「全く発見されることなく」襲撃してしまうことだって可能でしょう。バーミリオン会戦前哨戦時も、帝国側は当時自分達が根拠地としていたガンダルヴァ星系や戦闘が行われた星系の周辺の補給基地だけでなく、同盟領全域にある補給基地全てがヤンの根拠地たりえることを憂いていたくらいなのですから。第一、移動要塞がどこを目指して移動しているのかが確認できなければ、移動要塞が使用するであろう航路を特定することも、ましてや先回りして待ち伏せすることもできません。ちょっと離れてしまっただけでたちまちのうちに敵艦隊が捕捉不能となってしまうほどに貧弱な索敵・観測・哨戒システムを使って、一体どうやってそのような芸当を可能にするのでしょうか?
 では予め戦力をあちこちに配備して移動要塞の襲撃に備えればどうなるかと言うと、今度はその分散した戦力自体が移動要塞の各個撃破の好餌となってしまいます。これまた前述のように、帝国側が移動要塞から守らなければならない基地や惑星は数千~数万単位もの数です。これに全て戦力を分散することは現実問題として不可能ですし、また移動要塞にはヤンの直接指揮下にある総計3万隻近くの艦隊まで付随しています。戦力を分散するにしても、移動要塞と駐留艦隊を総計した戦力と対等以上に戦えるだけの戦力を各部隊に保持させなければ、移動要塞側にあっさり壊滅させられてしまうのがオチですから、戦力分散と戦力集中という二律背反の選択に、帝国側は悩み苦しめられることになってしまうでしょう。
 バーミリオン会戦前哨戦も、結局のところ上記のような論法で帝国は苦しまざるをえなかったわけです。これを考えれば、あのゲリラ戦法をはるかに強化した移動要塞戦術は、バーミリオン会戦前哨戦以上の猛威を振るうこと間違いなし(ただしNo.1814やNo.1840でも言及した「ヤン個人の謀略否定体質の問題」がなければの話ですが)と私は考えるのですが、どうでしょうか。


<そもそも「無限は質量保存の法則に反し、物理的に有り得ない」と言うのは我々の世界と銀英伝世界双方に適用されうる常識中の常識であり、私を含め皆さんが冒険風ライダーさんの主張に違和感を覚える最大のポイントもここだと思います。
そこで、原点に帰って質問をしたいのですが、冒険風ライダーさんは「要塞の無限の自給自足能力」をどのように定義しておられるのでしょうか?冒険風ライダーさんの論を見る限りでは
「要塞にはエネルギー、資源を無限に生産する魔法のようなシステムが付いている」※
と読めてしまい、ここが非常に気になる点なのです。>


 まあ仰る通りで、私は「要塞にはエネルギー、資源を無限に生産する魔法のようなシステムが付いている」と定義しています。これを立証する状況証拠は、件のユリアンとキャゼルヌの会話以外にもたくさん存在しますし、またそう考えなければ説明できなくなる描写もありますので。
 たとえば銀英伝考察3本編でも引用した、銀英伝8巻・P216上段~P217上段でヤンが要塞奪取に代わる、より有効な戦略として提言していた「共和革命戦略」とやらを語るくだりでも、ヤンははっきりと「吾々はイゼルローン要塞にとどまっているかぎり、食糧も武器弾薬もどうにか自給自足できる」と述べていますし、「その対比として」共和革命戦略を行った際の補給問題が語られています。これもイゼルローン要塞に半永久的な自給自足能力が存在することを充分に立証するものです。
 また件のユリアンとキャゼルヌの会話は、銀英伝9巻でも繰り返し似たような戦略構想が強調されているんですよね↓

銀英伝9巻 P75下段~P76上段
<「正しい判断は、正しい情報と正しい分析の上に、はじめて成立する」
 とも、ヤン・ウェンリーは言っていた。
(中略)
 したがってユリアンは、自分の思案と、補佐役たちの助言のおよぶ範囲で、より多くの情報をえるため、さまざまな手を打っていた。いつかイゼルローン回廊の両端で政治的・軍事的な変動がおとずれるだろう。いま皇帝ラインハルトは、イゼルローン回廊を無視した新しい宇宙の秩序を構築しつつある。変動は、彼の権威の華麗な甲冑に亀裂が生じたときにこそ、おとずれるにちがいない。>


 また、ロイエンタールの叛乱後には、件のユリアンとキャゼルヌの会話が思い起こされている描写まで存在します↓

銀英伝9巻 P133上段~下段
<ユリアンは、かつてアレックス・キャゼルヌに言明したことがあった。イゼルローン回廊の両端に、ことなる政治的・軍事的勢力が存在するときにこそ、イゼルローン要塞に戦略的価値が生じる。ただそれは半世紀ほど将来のことになるかもしれない、と。
 半世紀どころか、ヤン・ウェンリーの不慮の死から、まだ半年もたっていない。タイム・スケールは一〇〇分の一以下にまで縮小されてしまった。だが、考えてみれば、皇帝ラインハルトがローエングラム伯爵として歴史に登場してから、まる五年もたってはいないのだ。歴史はいま悠々たる大河としてではなく、万物を飲みつくす巨大な滝として姿をあらわしつつあるのだろうか。>


 これらの記述を見れば、件のユリアンとキャゼルヌの会話が決して冗談などではなく、今後自分達が取りえる超長期戦略構想として「大まじめに」語っていることは明らかでしょう。第一、はねだみずきさん自身も仰る通り、あの会話当時の政治情勢で早期の政変が発生する要素などどこにも存在しませんでしたし、ラインハルトの政権基盤も著しく安定していたわけですから、それを考えれば50年前後の「待ち」の姿勢で構えるべきというユリアンの戦略構想は、結果を見ればともかく、あの時点の判断としては情勢を見据えた極めて妥当なものだったと言わざるをえないでしょう。逆に言えば、それだけ当時のイゼルローン側にとって状況は絶望的だったわけですが。
 それにもし本当に孤立したイゼルローン要塞の補給事情が危ういというのであれば、キャゼルヌが冗談を返すよりも先に、ユリアン率いるイゼルローン陣営そのものが、ヤン暗殺と共に完全崩壊してしまっているのではありませんか? 近いうちに補給事情そのものが危なくなると分かっているというのに、あえて強大な帝国軍に、それもヤン抜きで対抗できるなどと考える酔狂な人間など存在するはずもないでしょう。ましてや、補給事情の悪化がどのような結果を招来するかを熟知しているであろうキャゼルヌであれば、「勝算なし」としてユリアンに降伏を勧めてもおかしくはありますまい。ヤン・ファミリーの面々に「自己犠牲」を美化するようなものなど存在しないのですし。
 というか、そもそもそれ以前に、ポプランやアッテンボローほどにユーモアセンスが高かったとも思えないキャゼルヌが、自分の専門分野であり、かつ今後の自分達の命運を左右する補給の話で、いくら身内でも(というよりもむしろ身内だからこそ)そのような自虐的な冗談を飛ばすとは思えないのですが。

 また、イゼルローン要塞内の備蓄物資についてですが、まず、イゼルローン要塞の備蓄能力に関して参考になる記述が銀英伝の中に存在します。1巻の帝国領侵攻作戦時の記述ですけど↓

銀英伝1巻 P190上段~下段
<彼らは各艦隊の補給部から食糧を供出するとともに、イゼルローンの総司令部に次のようなものを要求した――五〇〇〇万人分の九〇日分の食糧、二〇〇種に上る食用植物の種子、人造蛋白製造プラント四〇、水耕プラント六〇、およびそれらを輸送する船舶。
「解放地区の住民を飢餓状態から恒久的に救うには、最低限、これだけのものが必要である。解放地区の拡大にともない、この数値は順次、大きなものとなるであろう」
 という注釈をつけた要求書を見て、遠征軍の後方主任参謀であるキャゼルヌ少将は思わずうなった。
 五〇〇〇万人の九〇日分の食糧といえば、穀物だけで五〇億トンに達するであろう。一〇〇〇万トン級の輸送船が五〇〇隻必要である。第一、それはイゼルローンの食糧生産・貯蔵能力を大きく凌駕していた。
「イゼルローンの倉庫全部を空にしても、穀物は七億トンしかありません。人造蛋白と水耕のプラントをフル回転しても……」
「足りないことは分かっている」
 部下の報告を、キャゼルヌはさえぎった。>


 この記述を見れば分かるように、イゼルローン要塞の穀物貯蔵能力は7億トン程度に過ぎず、その他諸々を合わせたところでせいぜい10億トンあるかどうかといったところでしょう。上記のキャゼルヌの試算に従えば、1億トンの穀物で100万人の90日分の食糧が確保される計算が成立し、かつユリアン率いるイゼルローン陣営の総人口が約94万人ですから、これだけの貯蔵能力では、持久戦に出たとしてもせいぜい2~3年も持ちこたえればかなり優秀な方でしょう。しかも実際には、補給事情に不安を抱いた将兵の反乱や離反によって、これよりも早く自滅してしまう可能性が高いので、「無限の自給自足能力」なくしてイゼルローン要塞で長期にわたる持久作戦を展開するのはほとんど不可能に近いとすら言えます。
 しかも、当時のイゼルローン要塞はヤンが艦隊を率いてラインハルトと激闘を演じた直後で著しく消耗していた上、その間は外部からの補給を一切受けられる状態にはありませんでしたし、おまけにユリアンはヤン暗殺によってイゼルローンを見限った将兵達に対してこのようなことまで行っている始末です↓

銀英伝8巻 P203上段~下段
<離脱する人々に、ユリアンが倉庫を開放して物資の搬出を許可したので、ワルター・フォン・シェーンコップが異議を申し出た。いずれそれらの物資は再生産しうるものであっても、盗賊の手に金貨の袋をにぎらせてやることはあるまい、と。若者の答えはこうであった。
「どうせ必要以上のものは置いておけない。持っていって自由に使ってもらったほうがいいですよ。給料や退職金を出せるわけでもないのですから」>


 あの当時イゼルローンから離反した将兵や民間人は最低でも300万人以上は存在したでしょうから、もし要塞内の自給自足ができない状態で彼らに要塞内の備蓄物資を給与してしまえば、その後の籠城戦に重大な支障をきたすことなど余程のバカでもない限り簡単に理解することができるはずです。もしイゼルローン要塞に無限の自給自足能力が存在しないのであれば、ユリアンの行為は自分で自分の首を絞める極めつけの愚行でしかありえないでしょう。にもかかわらず、ユリアンの態度に異議を唱えているシェーンコップの発言ですら「それらの物資を持っていかれたら、今後の持久戦略に支障が生じる」といった類の危機感に溢れた内容は全く存在せず、「盗賊の手に金貨の袋をにぎらせてやることはあるまい」などというあまりにも能天気かつ余裕に満ちたものですし、「いずれそれらの物資は再生産しうるものであっても」と要塞の自給自足能力を肯定する内容まで盛り込まれているのです。
 結局のところ、これらの記述に全て納得のいく説明を行うためには「銀英伝世界における要塞には、エネルギーや補給物資を全て自前で調達することができる無限の自給自足能力が存在する」という設定がなければ無理なわけです。上記で私が挙げた数々の事象がこれ以外の理由で全て完璧な形で説明できるのであれば、ぜひとも聞いてみたいところなのですが。


<移動要塞の有効性を主張されておられますが、それは「銀英伝世界の常識」でしょうか?
「移動要塞と固定要塞が対決し、移動要塞側が戦力の9割以上を損耗する大敗北を喫した」戦いがあれば、「移動要塞は固定要塞に対して劣勢」と言う戦訓が導き出されるのが健全な軍事的常識というものではありませんか。
ラインハルトとヤンが移動要塞をその後使わなかった事は、二人の軍人としての見識を証明するものであれ、愚かさを証明する証拠とは成り得ないと私は考えます。>


 いえ、私はそもそもシャフトから移動要塞戦術を提言された時点でその重要性に全く気づかなかったばかりか、その後は移動要塞戦術自体を「なかったこと」にしてしまったラインハルトや、移動要塞の軍事革命的要素に全く気づかずに補給の重要性をアレほどまでにしつこく説いていたヤンの思考過程こそが「銀英伝のテーマから言っても非常識である」と述べているのであって、そうでなければ、そもそも今回の議論の発端となった銀英伝考察3自体、私は投稿していなかったことでしょう。そして銀英伝3巻におけるあの要塞対要塞の戦いに関しても、私は「間違った移動要塞の運用方法が、失敗して当然の結果を生み出したに過ぎない」という程度の認識しか抱いておりません。
 そもそも銀英伝では「補給問題」というテーマがことあるごとに地の文やキャラクターによって語られていましたよね? そして銀英伝世界における要塞に無限の自給自足能力が備わっていたことを、軍の要職にあったヤンやラインハルトは当然熟知していたわけです。ならば彼らは、移動要塞戦術が提言されたり聞いたりした時点で移動要塞の重大な戦略的・政治的価値を即座に理解しなければならなかったはずですし、またそうであってこそ「戦争の天才」だの「不敗の魔術師」の面目躍如というものでしょう。
 しかもあの2人は、移動要塞戦術を使えば敵側の要塞を破壊することができるし、代換の要塞を新たに持ってくることによって、イゼルローン回廊の攻略が極めて容易になることも認識していました。そうであるならば、イゼルローン攻略側のラインハルトはそれこそ件の戦いの「戦訓」を生かして、私が考えたような「小惑星特攻」のような戦術を編み出しても良かったはずですし、防御側のヤンもそれに対処するための方法を色々と模索しなければならなかったはずです。
 にもかかわらず、たかが移動要塞の使い方を根本的に誤っていたあの戦いの「戦訓」ごときで移動要塞戦術を「なかったこと」にしてしまうのでは、彼らに与えられた名誉ある呼称である「戦争の天才」だの「不敗の魔術師」だのといった名が泣こうというものではありませんか。

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board4 - No.1897

白旗掲揚

投稿者:はねだみずき
2002年05月16日(木) 12時54分

う~ん…断言されてしまいましたね。要塞には「魔法の無限自給システムがある」と(苦笑)。もしそれを確信されているなら反論不可と言ってしまった以上、反論する気はもうありません。そんな反則を認めてしまうんだったら何でもアリですからね。
何と言うか、冒険風ライダーさんと私の間には埋められない溝がある、と分かりましたので私は撤退します。意見の違いと言うよりは、「作品の設定」に対するスタンスの違いですが。
「上級のシャーロキアンは作品内の矛盾を説明する裏の設定を作り上げる」
とは1757番の書き込みで新Q太郎さんのおっしゃった事ですが、移動要塞反対論を唱えていた人々は、「なぜ移動要塞は多用されなかったか」と言う問題に付いて、この「裏の設定」を考えていたと思います。技術移植の難しさ、移動要塞にかかるであろうと容易に推察される莫大な経費、燃費問題。どれも説得力のあるもので、本編中で語られる事の無かった「移動要塞が二度と作られなかった裏の事情」として納得の行くものだったと私は思っています。
これに対し、冒険風ライダーさんの意見は「作品を読む限り」という「表の設定」を重視しておられます。これでは両者の主張が平行線を辿るのは当然と言えます。
言ってみれば、「裏の設定」を考える人たちは、「いちいち述べるまでも無いほど常識的な事」として、原作に記述されていないだけで、補給物資には食料だけでなく燃料も含まれるだろうし、巨大な要塞を動かしたら同盟の国庫が傾きかねないだろうし、要塞内で補給物資を生産するには原料がいるだろうなと思ってしまう訳です。
もちろん原作の記述と言う「表の設定」を重視する限り、これらの問題は存在しないと言うのは冒険風ライダーさんのおっしゃる通りです。しかし、「表の設定」では今のところ「移動要塞が多用されなかった理由」は説明不可ですよね。これが「原作の記述に沿って、完璧に」説明されていれば私も裏の設定をいろいろ考えなくてすんだのですが(笑)。
でも、冒険風ライダーさんにかかれば「ラインハルトやヤンが愚かだったから」で終わってしまうんでしょうか。

これ以上何か書くと単なる負け惜しみになりそうなのでもうやめにしたいと思います。お疲れ様でした。

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board4 - No.1898

既に出ているかもしれませんが

投稿者:佐々木公彦
2002年05月16日(木) 16時00分

たかだか20歳の下級官吏の息子が、亡命難で出来るはず無いと思うし、出来たとしても、20歳で初めてアンネローゼにあったキルヒアイスには既に大切な女性が居ることでしょう。

キルヒアイスを周りが他っておくわけがない、他の女性を無視する理由も霧非アイスにはない。

それに逃げるとしても
そして、十も年上の人間に対して初対面で失礼なことを言う生意気なガキを連れていく必要性を感じません。

連れて行かれない方法
婚約しているとか言えば皇帝本人はともかく、宮内省の役人その一程度では無理矢理連れていくことは出来ないと思います。

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